TOP
      健康食品ブルーベリーエキス

ブルーベリーエキス

言説の一般的概念や通念の説明

語句説明

ブルーベリー成分を含んだ製品の効果として主張されることのある「ヒトの眼に良い」という主張について評定する1。本評定では特に、サプリメントなど経口摂取による効果を対象とする。「ヒトの眼に良い」というのは具体的に眼精疲労や視力回復、その他の眼科疾患について一定の回復効果があるということを意味する。
一般的な用語として「ブルーベリーアイ」という概念が知られる。

  1. 1:同じツツジ科スノキ属に分類されるビルベリーについても似たような効果の主張がみられる。

効果の作用機序を説明する理論の観点

理論の論理性 D(低~中)

ブルーベリーに含有される成分であるアントシアニンの作用が視力回復効果の主な理論である。また、ビタミンA相当量が豊富に含まれているため眼に良いなど、他の成分による説明がみられることもある。

問題は、ブルーベリー理論がヒトの眼の「何に有効なのか」という対象を特定していない点にある。ヒトの眼の不調については神経系によるもの、内分泌系によるもの、視覚筋肉の働きの低下によるもの、加齢によるものなどさまざまな原因が考えられるが、それらを明確に区別した説明がないのは問題である。

理論の体系性 E(低)

ブルーベリーの理論は、その成分にアントシアニンが多く含まれるという事実に由来している。アントシアニンは網膜上に存在するロドプシンという光感知タンパク質の再合成に関与し、このロドプシンが分解・再合成を繰返すことで、ヒトは「物が見える」という状態を維持している。そこで、アントシアニンを意識的に摂取することで眼の健康状態を維持できる、というのがブルーベリー効果の理屈である。

しかし、眼の不調の原因はアントシアニン不足によるロドプシン分解・再合成不全にのみ還元できるものではない。眼の不調の原因には、神経、代謝、筋肉などさまざま考えられるからである。たとえば、一般的な視力低下は角膜や網膜の異常によるものであり、眼精疲労は視神経の異常を原因としている。さらに白内障や緑内障などにもまた別の原因が考えられるのである。

個々の疾患におけるそれぞれの要因を考慮すると、ブルーベリーの主張は単純化されすぎているといえる。ブルーベリー効果の主張の根拠であるロドプシンの分解・再合成が、一般的な「眼の不調」にどの程度かかわっているという合理的な体系性はそもそも存在しないのである。

理論の普遍性 E(低)

ブルーベリーがヒトの眼のどのような不調に効くのかが明言されていない。ヒトの眼の機能は加齢、ストレスなど外的要因の影響を受けやすく、ブルーベリー成分にこうした原因を適用し、普遍的に有効であるとするのは困難である。
国立健康・栄養研究所によって、ビルベリーが高血圧網膜症に有効性があるとの研究成果が紹介されているが、他の食品との比較研究という観点では懐疑的な立場をとっている1。それも特定疾患においてのみの有効性のため、普遍性の高い理論とはいえないだろう。

実証的効果を示すデータの観点

データの再現性 E(低)

ブルーベリー摂取がヒトの眼に有効であるという効果を示すメタ分析研究2は、これまでのところ見当たらない(2018.7.6時点)。質の高い研究の実施とデータ分析が課題である。
一方、本評定の直接の対象からは逸れるが、ブルーベリー摂取による血圧への効果に関するメタ分析は一応ある2。しかし、分析の結果、統計的に有意な効果は検出されておらず、「効果なし」との結論である。なお、ビルベリーに関するメタ分析も見当たらなかった。

  1. 2:平易には、複数の研究結果を統合して分析した科学的根拠の高い研究手法のことである。メタ分析の詳細はここちらのページを参照されたい。

データの客観性 E(低)

よく見かける「眼に良い」という効果を裏付けるデータはないといってよい。たとえば、「愛用者の感想」といったデータは掃いて捨てるほど報告されているが、生理学的な、視力0.1の対象者が0.7まで回復した、乱視や老眼に改善がみられた、眼精疲労を原因とする他の症状(頭痛、胃痛など)の軽減がみられた、といったデータが蓄積されているとはいえない。個人の主観に頼っており、客観的なデータとはいえない。

データと理論の双方からの観点

データ収集の理論的妥当性 E(低)

ブルーベリー成分の摂取が、ヒトの眼の何に良いのか言明されていないため、適切なデータ収集がない状況である。たとえば、「眼の疲労回復によい」といった主張についても、愛用者の感想などに依存していたら、適切なデータ測定とはいえない。

理論によるデータ予測性 E(低)

ビルベリー摂取による限定的なデータはあるものの、メタ分析などより精度の高いデータが見当たらないため、評価を割り引く必要がある。
仮に、ブルーベリー成分を摂取したところ眼精疲労が回復した、とする場合、どのような対象がどの程度摂取した場合どのくらいの効果が期待できるのか、といった明瞭な理論が必要であるが、こうした理論も見当たらない。

社会的観点

社会での公共性 E(低)

現在日本では、ブルーベリー=眼に良い、といった社会的通念が浸透している。一方、こうした主張を支える信頼できるデータがないことは問題である。
ブルーベリーに限らず、機能性表示食品制度によって、健康食品の科学的根拠の有無を市民が確認・判断できる社会になりつつあるが、実際に研究データがずさんであったとしても、それに対する批判があまりなされていない問題がある3。そのため、個々人である程度判断できるような科学リテラシー教育の拡充が望ましいと思われる。

議論の歴史性 E(低)

ブルーベリー成分が眼に良いということが注目されたのは、第二次世界大戦中のイギリス空軍のあるパイロットの好物がブルーベリージャムで、その彼が夕暮れでも物がはっきりと見えたという逸話から始まっている。ただし、この話自体信ぴょう性に乏しいとの指摘があり4、伝承的に語り継がれてきただけのようである。実際、あらゆる食品の中でなぜブルーベリーなのか、といった本質的な議論は逸話の継承という文化的な文脈しか見出すことができない。

社会への応用性 E(低)

少なくとも、ブルーベリー成分摂取によるヒトの眼への効果に対しては、メタ分析といった科学的根拠の高いデータは見当たらない。ビタミン補給としての有用性はあるかもしれないが、ブルーベリーである必然性は不明である。
ビルベリーについても、特定疾患に対する限定的なデータは示されているものの、健康な人が摂取した場合どの程度効果が期待できるのか、といった詳細は不明である。

総評 疑似科学

眼に良いという主張を裏付けるメタ分析研究は見当たらず、現状、データの面で大きく疑問が残る。ブルーベリー成分の摂取による血圧低下効果を研究したメタ分析はあるものの、複数の研究データの統合によって「効果なし」との結論になっている。

そもそもヒトの眼は外的影響を受けやすく、精神的な要因にも敏感に反応することが議論の前提である。そのすべてを包括できるような効果がもしあれば大変すばらしいことではあるが、他の科学的知見との整合性をみるに、無理のある主張だとみなさざるを得ない。
発端としては、イギリス空軍による逸話が輸入されたことによって、こうした効果が謳われるようになったと推定できる。

 

参考文献

  1. 国立健康栄養研究所「ビルベリー」
  2. Zhu Y, et al. (2017). Effects of blueberry supplementation on blood pressure: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials., J Hum Hypertens., 31(3):165-171.
  3. 松永和紀「機能性表示食品「えんきん」の根拠は、お粗末すぎる」FOOCOM
  4. The telegraph「Medals of night fighter ace John 'Cat's Eyes' Cunningham to go under the hammer」