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科学と疑似科学

科学と疑似科学

一般に、「これこれの条件を満たさなければ科学とは言えない」とか、「これこれの条件を満たせば科学である」とかの「科学であるための必要十分条件」は存在せず、そのため、科学と疑似科学を分ける境界を明確に決めることもできません。

しかし、明確な線引きは難しいものの、科学ならば「およそこれらの条件を満たすべき」とか、現実に科学とみられているものは「これらの条件を満たす傾向にある」という諸条件を設定することはできます。本サイトの評定基準は、これまでの科学哲学上の議論や知見を参考にしつつ、独自の考察を加えて設定しています。なお、これらの評定基準については繰り返し議論を行っています。

評定の条件をどれも高く満足する場合は「明らかに科学である」ということができます。たとえば物理学や化学ならば、どの条件も高く評定することができ、科学と明言できるでしょう。

評定の基本的な考え方

人を対象としたエビデンスの考え方(エビデンスレベル)

一方、医学や生物学、工学などの人体や技能に関する分野では、実験データが収集されていてデータの観点の条件は高く評価できますが、それを説明する理論が整備されてなく、理論の観点の条件は低い評価のままのことがあります。

また、政治学や経済学などの社会科学分野では、現象を説明する理論が立論・吟味され、理論の観点の条件は高く評価できますが、現象に関するデータを十分集めることが難しく、データの観点の条件は低い評価のままのことがあります。

このように、部分的に条件が低評価であっても、社会通念上、科学というべき分野や究明対象があるといえます。また、それまで確実と思われていた理論に重大な欠陥が見つかって科学とはいえなくなったり、正確なデータが収集できるようになって新たに科学になったりする分野もあります。科学であるかどうかは、究明の進行状況に応じて、時代とともに変化もします。

科学かどうかには不確実で不確定な側面があり、科学を装うことで架空の信用を得るという問題があります。一方で、科学として未完成状態にある探究が、疑似科学のレッテルを貼られることで、不当な扱いを受ける場合もあります。

ゆえに、「科学である」とか「疑似科学である」とかと固定的に考えるのではなく、科学的探究の現段階の知見に応じた流動的な指標と考えることが大切です。それでも、現状の社会問題を扱ううえでかなり有用に機能します。

サイトの考え方に関する主要参考文献

  1. 池内了『疑似科学入門』岩波書店2008
  2. 石川幹人『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』PHP研究所2016
  3. 伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』名古屋大学出版会2003
  4. ラカトシュ『方法の擁護~科学的研究プログラムの方法論』新曜社1986
  5. ポパー『科学的発見の論理(上)』恒星社厚生閣1971
  6. ポパー『科学的発見の論理(下)』恒星社厚生閣1972
  7. 菊池聡『なぜ疑似科学を信じるのか~思い込みが生みだすニセの科学』化学同人2012
  8. 高野陽太郎、岡隆/編集『心理学研究法~心を見つめる科学のまなざし』有斐閣2004
  9. 竹内薫『99.9%は仮説~思いこみで判断しないための考え方』光文社2006
  10. クーン『本質的緊張~科学における伝統と革新(1)』みすず書房1987
  11. クーン『本質的緊張~科学における伝統と革新(2)』みすず書房1992
  12. クーン『科学革命の構造』みすず書房1971
  13. T・シック・ジュニア、L・ヴォーン『クリティカルシンキング不思議現象篇』北大路書房2004
  14. 村上陽一郎『人間にとって科学とは何か』新潮社2010
  15. ロバート・マートン『社会理論と社会構造』みすず書房1961
  16. 渡辺恒夫、石川幹人/編著『入門・マインドサイエンスの思想~心の科学をめぐる現代哲学の論争』新曜社2004
  17. Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions