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UFO

言説の一般的概念や通念の説明

語句説明

UFOとは本来、未確認飛行物体(Unidentified Flying Object)のことで、空中に浮遊する正体不明の物体を示す。その本来の意味では数多くの報告があり、未確認の飛行物体があると考えられる。しかし本項目では、UFOを「異星人の乗り物」という通俗的な解釈で取り扱う。つまり、現在の人類よりも高度な文明をもつ生物がどこか他の星に生息しており、UFOに乗って地球に飛来しているという言説の科学性を評価する。

効果の作用機序を説明する理論の観点

理論の論理性 C(中)

宇宙のどこかに人類以上の文明をもっている生物がいるという仮説は、可能性として考えるならば妥当なものと思われる。しかし、宇宙の時空間的広さを考えると、その生物が今ここの我々の地球に来ることができるかといえばはなはだ疑問である。

理論の体系性 E(低)

異星人が地球に来ているとした場合、これまでの伝統的な物理学では受け入れられない「ワープ航法」などのSF的移動方法が必要となり、現在の物理学とは整合的でない。「人類以上の文明をもつ異星人は我々が想像もつかない技術をもっている」という前提が、理論を吟味する視点を見失わせ、疑似科学をもたらしやすくしていることに注意すべきである。

理論の普遍性 E(低)

UFO=異星人の乗り物という説は、たとえば、UFOが日本より欧米で多く目撃される傾向をうまく説明できず普遍性が低い。その点、「幽霊に遭遇したという主張が宗教的に容認されにくい文化圏でUFOとして目撃される」という説は注目に値する。金縛りが日本では地縛霊の仕業で正当化されるが、欧米では異星人にUFO内で身体検査を受けたとなりがちであるからだ。

また、UFOに伴って「異星人を取り締まる黒服の男たち(メン・イン・ブラック)」が目撃される事例が多いが、社会から逸脱した想像が、社会に合わせるように動いた結果としての象徴の現れと解釈できる。黒服の男たちの登場などは現在の日本社会ではまったく意味がわからない現象であり、文化的影響が色濃くうかがえる。

実証的効果を示すデータの観点

データの再現性 E(低)

UFOの目撃が散発的であるため、継続して観察して真偽を確かめるという手順が行えない。これまで得られているデータの再現性は低いと言わざるを得ない。

データの客観性 E(低)

UFOに関する主張は、機影の目撃や写真撮影、異星人との遭遇体験からUFOに乗りこんだ体験までさまざまある。これらは個人的な体験がほとんどであり、観察データとしては客観性が低い。誤った記憶や捏造された写真にもとづく主張もある中、客観性の高いデータを探すのは困難である。

データと理論の双方からの観点

データ収集の理論的妥当性 E(低)

UFOの目撃や遭遇体験はごく少数の人に起きているので、それをもって異星人の存在とするには無理がある。物的証拠が収集されてない現状では、幻覚起因説によってそれらの体験を説明するほうが妥当と考えられる。つまり、ある特殊な精神状況に陥った人々がUFO体験をしているならば、UFOは幻覚だったという仮説に分がありそうなのである。

理論によるデータ予測性 E(低)

UFO=異星人の乗り物という説は、いつどこにUFOが現れても、それは異星人の意思として片づけられてしまうので、予測性に欠けている。むしろ、幻覚起因説のほうに将来の目撃報告に関する予測性がある。目撃者の性格や精神状態の統計的な傾向性が今後説明されるかもしれない。

社会的観点

社会での公共性 C (中)

現在、「異星人の乗り物」が地球に飛来しているとすれば、軍と民間の航空管制網により観測にかかると思われる。かりにその管制網をくぐり抜ける高度な技術をもっている宇宙人ならば、人類とオープンにコンタクトしてこないのが不思議だともいえる。

仮に異星人が存在してUFOに乗って地球に飛来しているのならば、現代社会ではそれを確証できる態勢が一応は整っている。

議論の歴史性 E(低)

天体観測の技術を利用し、宇宙のどこかに知的文明が存在するどうかを探すSETIプロジェクト(Search for Extra-Terrestrial Intelligence)も進行しているが、現在のところ異星人存在の痕跡は見つかっていない。検討を重ねた歴史を通して、今のところ異星人は地球に来てはいないと考えられている。

社会への応用性 D(低~中)

UFO=異星人の乗り物という説が社会的に役立つとは考えにくいが、一方でこうした説が社会に何らかの悪影響を及ぼす可能性もまた低い。個人で信奉するだけであれば無害な主張といえる。また、異星人=幻覚起因となれば体験者の精神状態を分析し、問題を緩和する手がかりとして応用できる可能性もあるだろう。

総評 疑似科学

異星人がUFOに乗って来訪しているということには科学的根拠がなく、こうした見方は現在のところ疑似科学である。しかし、UFO体験を分析することにより、たとえば精神疾患の分野などで有効活用するという方向性は考えられそうである。

 

参考文献

  1. 石川幹人『超常現象を本気で科学する』新潮社2014