話題の科学

次亜塩素酸水

 本ページでは新型コロナウイルスに関連し、アルコール消毒などの代替品として注目されている「次亜塩素酸水」に関する情報を、これまで公表されている公的機関の見解や研究情報などをもとにQ&A形式でまとめています。



次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム

Q1次亜塩素酸水ってなに?

 次亜塩素酸水には菌やウイルスに対する消毒効果があるとされ、アルコールなどの代替品として注目されています。次亜塩素酸水には以下のような基本的な性質があります。次亜塩素酸ナトリウムの情報と合わせてご覧ください。

【基本情報】

次亜塩素酸水次亜塩素酸ナトリウム
定義たんぱく質を分解する性質がある次亜塩素酸、もしくは次亜塩素酸イオンを含む水塩素系殺菌剤のひとつで、食品製造の分野で食品添加物殺菌料として活用されている
pH値酸性アルカリ性
生成法塩素や塩酸を電気分解して生成する水酸化ナトリウム水溶液に塩素を反応させる
性質非常に不安定(日光に当たったり温度の高い環境で保管すると消毒効果はなくなる)次亜塩素酸水よりも安定
その他食品添加物として認可されている(食材などの消毒が用途。使用後は洗い流す)
Q2次亜塩素酸水の何が問題になっている?

 新型コロナウイルス感染症に関連し、次亜塩素酸水には品薄となったアルコール消毒などの代用品としての機能が一部で期待されました。一方、次亜塩素酸水は薬機法上の承認を経ておらず、効果や安全性について疑問がもたれていました。こうした背景から、NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)が中心となって有効性の評価が進められ、物品に対する消毒について、一定の条件下での有効性が認められました
またこの結果を受け、経産省、厚労省、消費者庁による合同見解が公表されました。それらの見解をまとめると以下のようになります。

次亜塩素酸水の消毒効果に関する公的見解
  • 検証の結果、一定の条件下において物品に対する消毒効果が示された
  • 具体的には、一定以上の濃度を保った次亜塩素酸水によって、物品を対象としてかけ流しやふき取りとして利用可能
  • 薬機法上の認可を受けていないため、ヒトの手指消毒として用いることは基本的に推奨されない(強酸性電解水製造装置(クラスII医療機器)で生成されたものは例外)
  • いかなる条件であろうと、空間噴霧は推奨されない(詳細は後述)
使用の際の具体的注意点(経産省、厚労省、消費者庁の合同見解より)
  • 拭き掃除の場合塩素濃度80ppm、かけ流しの場合塩素濃度35ppmで使用する
  • いずれの場合でも、十分な量や使用時間が必要である(少量では効果なし)
  • 消毒対象の汚れはあらかじめ落としておかなければならない(もとの汚れがひどい場合、200ppm以上の濃度が推奨)
  • 表面に残らないようにきれいに拭き取り、口に入れないようにする
  • 遮光性の容器に入れ、冷暗所で保管する必要がある
  • 各家庭で自作すると塩素が発生する可能性があり危険
  • 現時点(2020年6月)で空間噴霧用の消毒剤として認可された製品は存在しない
Q3次亜塩素酸水の空間噴霧はどうなの?

 次亜塩素酸水の空間噴霧は推奨されておらず、安全性や有効性について確たる知見は今のところありません。一部企業や大学等で独自の実験データが収集されつつありますが、空間噴霧について科学的に合意された評価方法は現在のところありません。
これは次亜塩素酸水に限らず既存の消毒剤すべてにおいて同様で、そもそも、消毒剤を空間噴霧することのメリット・デメリットについて十分に検討されていません。つまり、「〇〇という条件下で××という効果が示されれば消毒剤の空間噴霧が認められる」といった知見の共有や合意形成がなされていないということです。実際、WHOからは次のような見解が示されています。

Are public systems for disinfecting individuals such as spraying via tunnel or chambers safe to use?

No. Spraying of individuals with disinfectants (such as in a tunnel, cabinet, or chamber) is not recommended under any circumstances.
This practice could be physically and psychologically harmful and would not reduce an infected person’s ability to spread the virus through droplets or contact. Even if someone who is infected with COVID-19 goes through a disinfection tunnel or chamber, as soon as they start speaking, coughing or sneezing they can still spread the virus. The toxic effect of spraying with chemicals such as chlorine on individuals can lead to eye and skin irritation, bronchospasm due to inhalation, and potentially gastrointestinal effects such as nausea and vomiting. In addition to health safety concerns, the use of chlorine in large-scale spraying practices may prevent this resource from being used for important interventions such as drinking water treatment and environmental disinfection of health care facilities.

WHOホームページより引用

 

 なお同様の見解は、厚生労働省やCDC(米国疾病管理センター)などからも示されています。そのため、「次亜塩素酸水を含む消毒剤の空間噴霧(スプレー、ウォークスルー消毒含む)について、現時点で有効性・安全性に関する確たる知見はなく、人体に有害であるなどのデメリットが空間噴霧によるメリットを上回ることが予想されるため、その評価方法さえ定まっていない」が、おおよその国際的な見解といえるでしょう。

まとめ
  • 物品に対して十分な量の次亜塩素酸水を用いれば一定の消毒効果が見込め、有効性に関して公的見解がある
  • ただしこれは薬機法上の消毒剤としての承認ではなく(「除菌」のみをうたっている)、法的には手指に使えない「雑貨」という取り扱いになる
  • 特定のウイルスを無毒化することを効能・効果として明示とする場合、医薬品・医薬部外品の承認が必要
  • 2020年6月時点で、「空間噴霧用の消毒薬」として承認が得られた次亜塩素酸水は存在しない
  • そもそもすべての消毒剤において、空間噴霧の効果・安全性について国際的に確立した評価方法はない
  • 次亜塩素酸水は比較的生成が容易であり、それが悪質な事業者が参入しやすい温床となっている可能性も考えられる
補足

現在国民生活センターの関連事業である「事故情報データバンクシステム」において、次亜塩素酸水の利用に際して心身の不具合が起きた、などの報告が寄せられています。使用に際してはこうした情報も参考にできるでしょう。以下に、次亜塩素酸水の利用に関して参考になるウェブサイトを羅列します。

最終更新日: 2020年12月11日