話題の科学

デキサメタゾン

デキサメタゾンのエビデンス解説

 デキサメタゾンはステロイド系抗炎症薬 (SAID) の一つで、炎症の原因に関係なく炎症反応・免疫反応を強力に抑制します。抗炎症作用、抗アレルギー作用、免疫抑制作用など広範囲にわたる作用があり、1960年代から使用されています。具体的には、リウマチ、皮膚疾患、重症アレルギー、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、クループ、脳浮腫などに使用されています。

 2020年7月17日にNew England Journal of Medicine(NEJM)に掲載された論文において、デキサメタゾンの新型コロナウイルス患者に対する死亡リスク軽減効果が明らかになりました。また、それを受けて日本では、新型コロナウイルスに対する治療薬としてレムデシビルに続く二例目の特例承認がなされました。ここでは、当該論文について解説します。まず以下が、当該論文の基本情報および主要な研究結果です。



デキサメタゾン

The RECOVERY Collaborative Group 2020

レムデシビルの投与に効果があった研究です。この大規模RCTの結果によって、日本で新型コロナウイルス治療薬として特例承認されました。

研究方法
研究デザインオープンラベル(盲検でない)のランダム化比較試験
実験条件
総被験者数6425人 デキサメタゾン群2104人 対照群4321人
平均年齢デキサメタゾン群66.9歳(SD15.4) 対照群65.8歳(SD15.8)
男女比6.4:3.6
研究結果
全体死者数(28日後)
デキサメタゾン群482/2104人 対照群1110/4321人 RR0.83, 95%CI[0.75–0.93]
退院者数(28日以内)
デキサメタゾン群1413/2104人 対照群2745/4321人 RR1.10, 95%CI[1.03-1.17]
実験開始時人工呼吸器装着患者の死者
デキサメタゾン群95/324人 対照群283/683人 RR0.64, 95%CI[0.51-0.81]
実験開始時酸素吸入患者の死者数
デキサメタゾン群298/1279人 対照群682/2604人 RR0.82, 95%CI[0.72-0.94]
実験開始時酸素吸入なし患者の死者数:デキサメタゾン群89/501人 対照群145/1034人 RR1.19, 95%CI[0.91-1.55]
考察

デキサメタゾンの効果
図1 デキサメタゾンの効果(論文内より引用)
  上記の通り、デキサメタゾン投与群はそうでない群と比べて死亡リスクが統計的に有意に低い結果となりました(RR0.83, 95%CI[0.75–0.93])。また実験開始時に人工呼吸器を装着していたり、酸素吸入を受けていたりするなどの中~重症患者に対しては、より顕著な効果が得られています(RR0.64, 95%CI[0.51-0.81])。一方、実験開始時点で酸素吸入を受けていない患者に対しては有意な結果が得られませんでした。

  ただしこのような制限があるとはいえ、デキサメタゾンには新型コロナウイルスに対する一定の治療効果(死亡リスク軽減効果)が認められると考えられます。重症患者に対する標準的な治療法の確立に向けた大きな知見といえるでしょう。


  1. The RECOVERY Collaborative Group (2020): Dexamethasone in Hospitalized Patients with Covid-19 - Preliminary Report, N Engl J Med. doi: 10.1056/NEJMoa2021436. Online ahead of print.

最終更新日: 2020年12月11日