第3回サイエンスカフェ 2013/9/14(土)
「科学報道の裏側で記者は何を考えているのか」(話題提供:小島正美)
明治大学駿河台キャンパス14:00~17:00
科学記者の多くは、一般市民の目線に合わせて、科学的に正確な表現をなるべく避け、感情的な物語を作り上げる。 そして、それに合うような専門家の説明を探し、物語の正当化を図る。ポジティヴな話題を出稿してもボツになるので、デスクが受け入れそうなネガティヴな話題に加工するように最大限努力する。 なにせ、暗く不安をあおる報道ほど注目を集め、「売れる」からだ。世の中の定説になっている話題に反する科学的事実を知っても、記事にする機会はほとんどない・・・・・・・。
第3回 開催報告
「メディアの読み解き方」と題した小島記者の話題提供は、新聞記者の最前線からの問題提起として注目すべき内容だった。
まず、ワクチン副作用などのリスク報道を取り上げ、一部の副作用が実態以上に大きく表現され、保健に関する公共政策の足をひっぱる報道がなされている点の指摘があった。
次に、メディアは「悪い危ない話」ばかりを中心に触れることで、それが全体であるかのような印象を市民に与えている問題がある。報道に携わる人間の科学リテラシーが不十分な問題もさることながら、科学における多様な見方が、報道には出てこない難点も大きいと現状報告がなされた。
さらに、危ない情報のほうがよく売れるという報道の偏りから、「世間の空気に合っていないとダメ」と思って、報道を自粛する傾向まで、さまざまな問題の背景があらわになった。
こうした取組から、メディア報道を吟味するメディアが必要と、小島記者は訴える。
一般参加者:12名 オブザーバー:2名
講師紹介
小島 正美
毎日新聞社生活報道部編集委員(記者)
東京理科大学非常勤講師 1951年生まれ
1974年愛知県立大学外国語学部英米研究学科卒。
同年毎日新聞社入社
サンデー毎日や長野、松本支局を経て1987年東京本社生活家庭部記者の後、
1995年千葉支局次長、1997年から現職。
’97年明治大学文学部助教授。
’02年同教授。’04年より現職。この間に’02年米デューク大学客員研究員。
2000年から東京理科大学非常勤講師。
著書に『メディアを読み解く力』『誤解だらけの放射能ニュース 』『正しいリスクの伝え方―放射能、風評被害、水、魚、お茶から牛肉まで』『こうしてニュースは造られる―情報を読み解く力』など