後づけ仮説(アドホックな仮説)(Ad hoc hypothesis)

  • A「血液型が何かによって君の性格がわかるよ」
  • B「(心理学の研究を取り出して)いや、わかってないじゃん!」
  • A「その研究は「性格」を表していないね。別の研究では血液型で性格がわかるとされているよ」
  • B「(違う研究を取り出して)この研究でも、血液型によって性格がわかるということが否定されているみたいだけど……」
  • A「すべてが血液型でわかるわけではなく、例外もあるんだ。たとえば、こういう調査によって血液型と性格の関係は証明されているんだよ」
  • B「ん?その調査では女性の性格と血液型は関係ないという結果になっているよ」
  • A「女性については別のこの調査でわかっているんだ!」
  • B「それ、最初に君が否定した研究じゃん」
  • A「……」

科学的な考え方として、既存のデータを同じくらい説明する理論がいくつかあったら、より簡潔な理論の方を採用することが一般的です。というのは、上に描いた事態に陥ると、建設的な議論が形成できないからです。 上の例のような理論を「アドホックな仮説」といいます。アドホックとは「特定の目的のために」という意味であり、上の例でいうと、「血液型によって特定の人の性格がわかる」という理論を正当化する“ために”理論を構築しているのです。

ある理論について、それを否定するデータが得られても、理論の方を補正し続ければ、反証することが不可能になってしまいます。何を言われても、ダラダラとえんえんに「屁理屈」を捏ねることさえできてしまい、得られたデータがなおざりになってしまいます。観測されたデータを十分に予測できなければ科学的な理論とはいえないのです。

科学的に何かを主張する場合、その説明責任は「肯定する側」にあります。先にあげた例でいうと、「血液型と性格」について「肯定」したい側が十分なデータを用意して説明しなければならないのです。観測(調査)によって得られたデータから規則性を予測して仮説を立てるのが科学的な手順であるため、「後づけ」によってどんな反証をも受け入れない理論は問題といえるでしょう。