予防接種の有効率

インフルエンザワクチンを打ったのに、インフルエンザに罹ってしまった。――こういう経験をしたことはありませんか?また、それによってワクチンは「効かない」と思ったことはありませんか? 予防接種やワクチンについての根強い誤解の一つに「有効率」の問題があります。

ワクチン接種において「有効率70%」といった場合、「ワクチンを打たずに発病した人のうち、70%はワクチンを打っていれば発病が避けられた」という意味となります。しかし、「100人のワクチン接種者のうち、70人が発病しない」という意味に誤解されることが非常に多く、冒頭で述べた例も、こういった思い込みに起因しているといえるでしょう。有効率とは「全ての人」における数字を表すものではなく、「発病した人」の中を表すものなのです。

たとえば、ワクチン接種を受けていない100人の生徒がおり、内10人がインフルエンザに罹患したとします。有効率70%とは、“もしも全員がワクチン接種を受けていたら”その10人のうち7人は発病せず、3人が発病するということになるのです。計算としては、ワクチン接種をすれば97人が発病せず、反対に、接種しなければ90人が発病しません。

ワクチンの効果について、「確実に」7人には効いたのですが、そもそもワクチンを打っても打たなくてもインフルエンザを発病しない生徒も多いため、“実感される”効果は薄いのです。そのため、ワクチン“自体が”効かないと錯覚してしまうという問題がここから発生します。

たとえば、よく言われる例として、「インフルエンザ患者40人のうち、75%にあたる30人がワクチンを接種していた。(だから、ワクチンの効果は薄い)」などの言い回しがあります。これだけ聞くと、確かにインフルエンザワクチンには効果がないと思い込んでしまいます。実際に、こうした報道が広まった結果、学校でのインフルエンザワクチンの集団接種が廃止されたという経緯もあります。

しかし、上の言い回しは有効率を正しく理解できておらず、「どういう集団においてインフルエンザが流行したのか」という視点が欠けていることが指摘できるのです。ワクチンの有効率を正しく理解することは「科学的に考える」ことを養う上でも大切だといえるでしょう。