知覚世界(Perceptional World)

人間は世界をありのままに知覚していると思いがちですが、そうではありません。生活に必要な範囲で周囲の情報を無意識のうちに取捨選択し、一貫した独自の知覚世界を構成しているのです。そのため、奇妙な知覚の原因のほとんどは、一貫した知覚世界を構成するうえでの「副作用」や「失敗」といえるでしょう。「不思議なものが見えた」「幽霊がいた」なども、知覚の誤認識の一種であると考えられます。

現在の科学では、「ありのままの世界」とは物理的機器で測定できる物理世界のこととされています。物理世界と知覚世界は確かにかなり近いのですが、微妙に異なってもいます。たとえば、早い変化は知覚できますが遅い変化は知覚できないので、遅い変化は物理世界に存在しても知覚世界からは排除されています(チェンジ・ブラインドネス)。反対に、物理的には存在しないものが知覚世界で見えることもあるのです。

以下の図を参照してください。図1のハスの葉3枚をおのおの特定の位置まで回転させると、図2のようにカニッツァの三角形が見えます。3つの黒い円をおおうように白い三角形が前方に存在して見えるかと思います。これは、ハスの葉3枚が特別な位置にあると考えるよりも、白い三角形がおおっていると考えるほうがありそうな状況なので、知覚がそれに合わせて世界を構成しているのです。

また、図3のポンゾー錯視図形は、ハの字の内側の二の字が、上下同じ長さなのにもかかわらず、上のほうが長く見えます。これは、ハの字の部分を遠くまでつづく平行な線路のように知覚するためであり、遠近関係で遠くのものは見かけより長いと認知が判断します。図4では、カニッツァの三角形の2辺がハの字の役割をしてポンゾー錯視を生んでいますが、物理的には存在していない2辺が、錯視を生むくらい知覚世界にありありと存在していることがわかると思います(クオリア)。

図1
ハスの葉3枚
図2
カニッツァの三角形

図3
ポンゾー錯視図形
図4
見えない辺によるポンゾー錯覚