自然治癒力(Spontaneous Cure)

近ごろ、この言葉がもっともよく話されているのは、いわゆるニセ医学の界隈においてではないでしょうか。自然治癒力とはヒトも含めた生物全般が例外なく備えている普遍的な能力ですが、ニセ医学の多くはこの自然治癒力を「(通常医学よりも)大事にする」や「向上させる」といったことを謳い文句にして、患者を集めています。

「切られたトカゲのしっぽがまた生えてくる」ことに代表されるように、生物の身体は自らで自らを治癒します。ヒトにおいても同様で、風邪や切り傷などの治る過程がその典型でしょう。そして当然ながら、身体の状態によって自然治癒力の働き方も異なるのです(ある病気において喫煙者と非喫煙者では治癒するスピードが違うなど)。

しかし、いわゆるニセ医学の現場では、この自然治癒力を拡大解釈した場面が目立ちます。ニセ医学による通常医学への批判などもその典型です。

よく聞かれる誤解の一つに、「通常医学は自然治癒力を軽視している」といったものがあります。しかし、風邪や切り傷をはじめ、通常医学も自然治癒力に頼っています。また、3分の1以上残っていたら「再生する」というヒトの肝臓の特徴を利用して生体肝移植が行われたりと、むしろ自然治癒力を効果的に利用しているとさえいえるのです。

「自然治癒力を○○する!!」などといった文言をみかけたら、一度足を止めてみる必要があるでしょう。