確証バイアス(Confirmation Bias)

  • 「知人にもらった幸運のお守りのおかげで、今日100円を拾いました。」
  • 「知人にもらった幸運のお守りのおかげで、テストの点数が上がりました。」
  • 「知人にもらった幸運のお守りのおかげで、彼女(彼氏)ができました。」……

身近な生活の中でこのように思ったことはありませんか。確証バイアスとは、本来であれば偶然起きただけの体験の間に対し、認知の偏りから「意味づけ」を行うことをいいます。つまり、“お守りの効果を信じているので、効果があるとみなせる事例ばかりが目につき、その確信をより深める”ということが確証バイアスによって導かれるのです。お守りの効果を“信じるために、”体験を探してくる、と言い換えてもいいでしょう。

冒頭の例でいくと、100円を拾ったのは偶然でしょうし、テストの点数が上がったのは本人の努力に他なりません。恋人ができたということに至っては、おそらくもっと様々な要因があるでしょうから、それらすべてを「お守りの効果」に帰属させてしまうのはあまりにも短絡的です。にもかかわらず、確証バイアスによってお守りの効果を確証するのに都合のよい記憶ばかりが思い出されるのです。


このような認知の偏りを解消するのに適切な考え方として、下表1に示すような四分割法がオススメです。表1では、「お守りを持っていた時」と「持っていない時」それぞれに対して、「良いことが起きた頻度」と「悪いことが起きた頻度」をA、B、C、Dとして表しています。

今、仮に表2のような結果が導かれたとします。この結果から、「お守りに効果があった」といえるでしょうか。表2では「お守りを持っていた時」には10回「良いこと」が起きています。一見すると効果があるように見えますが、「お守りを持っていない時」にも7回「良いこと」は起きています。

表1
良いことが起きた悪いことが起きた
お守りを持っている頻度A頻度B
お守りを持っていない頻度C頻度D
表2
良いことが起きた悪いことが起きた
お守りを持っている10回7回
お守りを持っていない7回5回

どうでしょう。これだけでは、まだお守りに「効果がある」といえるかもしれません。しかし、「お守りを持っていた時」には「悪いこと」が7回起きている一方、「お守りを持っていない時」には起きている「悪いこと」は5回でした。「お守りを持っていた時」に起きた「悪いこと(頻度B)」に対する「良いこと(頻度A)」と、「お守りを持っていない時」に起きた「悪いこと(頻度D)」に対する「良いこと(頻度C)」を考えると、その比率はほとんど変わらないのです(A:B=7:10、C:D=5:7)。

良いことがたくさん起きても、それと同じくらい悪いことが起きているのであれば「お守りに効果がある」とはいえないでしょう。つまり、この結果を考慮すると、お守りを持っている時のほうが「不運である」ともいえるのです。

確証バイアスに陥っていると、表1の頻度Aや頻度Dばかりが想起されてしまい、頻度Bや頻度Cが目につかなくなってしまいます。ですが、上に示したように、頻度A、B、C、Dそれぞれを比較検討することでそうした認知の偏りを解消することができるのです。

四分割法を用いることは自分の思考を整理したり、考え方をまとめるのにも役立ちます。反面、この方法は労力を要するため、普段の生活からいちいち用いることは難しいでしょう。時と場合によって適切に使い分けていくことが望まれます。