万能理論…(Universal Theory)

万能理論とは、どのようなことに対しても説明を与えられる理論のことをいいます。一見すると素晴らしい理論のように思えますが、科学のうえではナンセンスです。  科学的な理論は、起きそうなことを予測すると同時に、起きそうもないことをも予測しなければなりません。万能理論は、何が起こってもその理論によって起きた理由を説明できてしまうため、予測の役に立たないのです。

具体例を挙げてみましょう。ある幽霊愛好家が「霊や魂は、物体になったりならなかったり、自らの意思で自由に変えられるのです」と言って幽霊は存在すると主張します。しかし、幽霊否定派に「幽霊は壁を通り抜けるくせに、ドアを叩いたり足音を鳴らしたりするのは矛盾している」と反論されてしまいます。本来であれば、実験などの客観的な手続きによって皆を納得させなければ「科学」とはいえないのですが、この場合、幽霊愛好家はどんなことも「幽霊の意思」で片づけることができてしまいます。つまり、実験で目撃されてもされなくても、写真に写っても写らなくても、壁を通り抜けた次の瞬間ドアを叩いたとしても、つねに幽霊が存在すると主張できてしまうのです。

このように、将来を予測してそれが起きるか起きないかを確かめるという手段がとれなければ、審議の判別がつかず、科学的な議論も成立しなくなってしまいます。