パラダイム(Paradigm)

パラダイムとは、トーマス・クーン(科学史家)によって提起された概念で、科学の歴史を紐解く上で重要な概念の一つです。狭義の意味では、科学において、どのようなデータが正当で、どのような方法が用いられ、どのような語句が選択されるかを決定する「枠組み」のことをいいます。これは、純然無垢な事実として語られる科学理論は存在せず、どのような理論も、それが属する文脈があるということです。また、競合するパラダイム間においては合理的な比較は事実上不可能(これを「通訳不可能性」といいます)であり、科学は「革命」のように変化していくものであることをクーンは強調しました。たとえば、天動説と地動説の争いなどがいい例ですね。

パラダイムという概念の登場は、科学史において極めて衝撃的な出来事でしたが、それゆえに多くの批判も受けました。実際、クーンが唱えたパラダイムには21もの意味が含まれていることが他の研究者らによって分析・批判されており、さらに、現在ではより多様な概念として社会に浸透しているため、科学用語としては形骸化しているといえるでしょう。